「Back to the Nature」体験記
南信州・伊那谷。おおぐて湖に誕生したカルチャースポット「COSMOS」がいざなう、音と光によるチルアウト体験「Back to the Nature」。心をほぐし、解放する旅先がここにはある。
南信州・伊那谷の”おおぐて湖”の湖畔に「COSMOS(コスモス)」という施設がオープンした。
湖畔に誕生したその施設は、「Back to the Nature」というチルアウト体験ができるスポットになっているらしい。チルアウトな体験なんて、今まで味わった事がなかったなあと思い、足を運んでみました。
施設「COSMOS」で体験出来る「Back to the Nature」
「COSMOS」の施設は、モンゴル式ゲルと呼ばれる遊牧民が使う移動式住居で出来ている。
長い移動生活の中でも快適に過ごせるように作られた構造のゲルは、心地の良い高さの天井と、柱を持たない円形の広い造りとなっており、天窓から外光が差し込む仕様になっている。
この空間に、ミラーボールやスモークといった、クラブカルチャーが育んできたテクノロジーを組み合わせたのが、「COSMOS」の大きな特徴だ。
中に入ると、そこは背もたれ付きのクッションが置かれたシンプルな空間。そして噂に聞いていた大きなミラーボールがすでにキラキラと光を放ち、空間全体に広がっていた。ほどよい寝心地のクッションに身体をあずけたら、早速「Back to the Nature」の体験がはじまった。
鮮やかな色彩美のミラーボールがゆっくりと時間を進めるかのように回りはじめた。
横たわった目線の先はちょうど、天井のミラーボールにいくようになっているから、リラックスした状態でその閃光が目に映るようになっている。
スモークマシーンによる煙の演出が、より鮮やかなミラーボールの閃光を産み出して、徐々に身体ごと包み込まれるような、浮き上がるような、空間を認識している線が解放されて、不思議な感覚に。
そして旋回するミラーボールが生み出す光の筋を無心のまま追いかけていると、いつもは気にしていた時間の流れを忘れて無心になっていることに気づいた。
プライベート感の守られた貸切スペースは、安心感があった。他には邪魔されない、自然体の自分の時間に没入出来る。ゆっくりとリラックスするーチルアウト、という言葉が表しているものが、少しずつわかりはじめてきた気がした。
「Back to the Nature」。そのイメージを意識しながら、 「COSMOS」に流れる音を聴いていたら、ふいに『インターステラー』という映画のワンシーンを思い出した。宇宙での長い旅路の中で、宇宙飛行士たちが精神を落ち着かせる時に聴く、地球の音。自然の音。そんなイメージが頭に浮かんだ。
こんなに長い間自然の音に包まれる時間は、日常ではなかなかないかもしれない。
約30分という時間はあっという間にすぎていって。体験した後は、不思議とスッキリした気持ちになった。うまく言葉で表現出来ないが、その独特な感じが面白かった。
「Back to the Nature」の体験を私なりに解釈すると、「自然体な自分に出会う」感覚。
自分と向き合う事に忘れていた自分にも気づいた。それがチルアウトな体験ってことなのかな?
ほぐされた私の心が語りかけてくる。
「COSMOS」での新感覚な体験が、私に新たな意識を与えてくれた。
このサービスをつくった「おおぐて湖キャンプ場」のオーナー・ハルさんに話しを伺いました。
「COSMOS」制作インタビュー
ーーそもそも、どうしてこういった施設でのコンテンツをつくろうと思ったんですか?
(ハルさん)
もともと音楽が好きで、東京の音響の専門学校へ行ったりしていたので、純度の高い音が聴きたいという純粋な音好きの欲求から生まれたものでもあります。円形の形をした構造の中で音を鳴らしたら反響が良いだろうと思ったのと、現代音楽の低域を補うためにウーファースピーカーを用意しているんですが、近隣の苦情にならないように、ゲル中央の地中に埋める工夫をしたりして(笑)
ーーもともとは視聴覚室やスタジオのようなイメージでつくられたものだったんですね。
(ハルさん)
ただ、視聴覚室というだけでは、湖畔にある施設としてあまりにも用途が狭いので、この音響設備を活かして、何かアイデアを実現させたいという想いから、「Back to the Nature」という企画が生まれました。
ーー「Back to the Nature」というネーミングはどこから来てるんですか?
(ハルさん)
『Back to the Future』という80年代の有名な映画からオマージュしたものです。
行き過ぎたテクノロジーと情報化社会に対して、生き物として自然に立ち返る、そんなことを妄想してみることって今の時代に意外とぴったりくる感覚なんじゃないかなと思って。
どんな音をこの施設で味わってもらおうか、という点もすごく悩んで試行錯誤してきた経緯があるんですが、このネーミングを思いついた時にすごく音とコンテンツのコンセプトにマッチした感じがあって、これをきた人にはまず味わってもらいたいという想いを、カタチにしました。
ーーそういえば、ゲルには「COSMOS」という名前がついてますよね。こちらもどのように決まっていったんでしょうか?
(ハルさん)
「COSMOS」は英語で「(秩序と調和の表われとしての)宇宙、コスモス」という意味があるんです。「Back to the Nature」が届ける没入的な体験を通して、体験した人が自分なりの調和を見つけてほしいという意味をこめています。
ーー私も実際に体験して、「COSMOS」の没入的な時間が、他ではなかなか味わえないものに感じました。それに、天井に設置されているミラーボールが空間の演出に一役買っているなと思いました。当初から設置する予定だったのでしょうか?
(ハルさん)
音だけでは、体験としての没入感が一般の人では味わいづらいだろうと考えて、コロナ前までベルリンで活動をされていた京都在住のミラーボール作家 KALA millerさんの一点ものの大型のミラーボールを設置していて、視覚的な効果を演出しています。
ーー確かに、ハンドメイドであの大きさのミラーボールは他でみた事ないですし、実際に光の反射を見ているだけで時間が過ぎてしまいますもんね。
(ハルさん)
そうなんです。ミラーボールとウーファースピーカーが設置されたゲルなんて聞いた事がないし、まるでclubですよね。もちろんclubのような機能も充分に併せ持った施設にもなっていますし、天窓から光の差し込むこの施設はヨガスタジオに使われたり、様々な企画に対応できるような造りになっています。
おおぐて湖では、チルアウトを1つのテーマとして施設を運営してるので、クッションなどを設置して、チルアウト体験を深めてもらえる施設にするのが全体と合っているかなと思って、今回のコンテンツが生まれています。
今後、いろんなサウンドクリエーターともこの施設を通してコラボしていきたいと思ってますし、そんな音楽面での展開も楽しみにしてもらえたらと思っています。
ーーなるほど。進化するゲル「COSMOS」ですね。
(ハルさん)
おおぐて湖畔も絶えず進化しているので、この施設もオリジナリティを持った展開をつくっていけたらと考えています。
ーーありがとうございました。